フキゲン課長の溺愛事情
　彼は、元カノの状況と璃子の状況を重ねて見て、元カノへの罪悪感から璃子を同居させてくれたこと。昨日、ふたりで出かけてとても楽しかったこと。いつもはおもしろがるばかりなのに、初めてかわいいって言ってくれたこと。そして夜、彼に抱かれたこと。それなのに今日、彼は元カノの結婚式に出席し、璃子を抱いたことを『後悔してる』と話してるのを、偶然聞いてしまったこと……。

「後悔してる……か」

　沙織がボソッとつぶやいた。

「きっと楽しかったから、勢いと流れで私と寝ちゃって、それを後悔してるのよ」
「『後悔してる』はキツイね……」
「うん……。こんなことになるなら、最初からちゃんと引っ越し先を探せばよかった。そうしたら、彼のこと、好きになったりしなかったのに」
「仕方ないよ。山城くんとのことが突然すぎたから……」

　沙織が慰めるように言った。

「そうよね。和田さんの言葉に、ついカッとなっちゃって……」
「でも、私、驚いてるんだ」
「なにを？」
「璃子がこんなに早く立ち直って、新しく好きな人を見つけたことに」
「ああ……」
「だから、きっと、その人はすごくステキな人なんじゃないのかな」
「どうしてそう思うの？」
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