フキゲン課長の溺愛事情
 甘く低い声でささやかれ、彼の熱い手のひらが璃子の肌の上を滑る。腰の辺りがざわめいて、璃子の鼓動が大きくなった。

「今さら……ノーなんて言えない」
「ノーなんて選択肢は最初からない」

 わずかな笑みとたっぷりの熱情を含んだ声で達樹が言った。服を脱ぐのももどかしく、素肌を合わせる。そして、バスルームで……寝室で……求めるままに、求められるままに、肌を重ねた。

 ようやく達樹に眠らせてもらえたのは、何度も意識を飛ばされた後だった。達樹の腕の中で、満たされた幸せな気持ちで眠りに落ちる直前、璃子は「俺は璃子がいないと笑えないようだ」という彼のささやきを聞いた。 
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