フキゲン課長の溺愛事情
 独占欲のにじむ言葉を言われて、璃子の鼓動が高くなる。

「それって……もしかしてヤキモチですか?」

 達樹が右手で口もとを押さえて、璃子から視線を逸らした。普段無愛想な彼が、こんなふうに照れを隠そうとしているのを見ると、胸がキュウッとして愛しさが込み上げてくる。

「かーちょう! 顔見せてください」
「嫌だ」
「えー、見せてくださいよぅ。課長の照れた顔、見てみたいもん」
「うるさい。こうなったのはおまえのせいなんだからな」

 達樹の顔が頬骨の辺りまで朱に染まっているのが見えた。璃子が笑ったのを見て、彼が不機嫌そうに言う。

「家に帰ったら覚えておけよ。責任取らせるからな」
「責任ってなんの責任ですか?」
「俺を妬かせた責任だ。たっぷり啼かせてやるから、覚悟しておけ」
「ひえっ」

 達樹がニヤッと笑うので、璃子は首のうしろがぞわぞわするのを感じた。あわてて片手でさする彼女の横で、達樹が大きく息を吐き出した。次の瞬間には表情はすっかりもとに戻っていて、不機嫌とはいわないまでも、冷静だ。

「わー、変わり身、はやっ」
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