フキゲン課長の溺愛事情

「いえ、そうじゃなくて……。璃子は五年もお付き合いしてきた男性に愛想を尽かされるくらいなんですよ。だから、きっと藤岡さんもいずれ璃子に耐えられなくなるんじゃないかと……」
「え!?」

　母の言葉に璃子は耳を疑った。

「私に耐えられなくなるってどういう意味!?」
「だって、璃子は昔っから〝いらんことしー〟のお節介だし、うるさいんですよ。一見しっかりしてそうだけど、外見に騙されちゃダメです。実は結構抜けててマイペースなんですから。今回だって五年も尽くしてきた恋人に、若い子に乗り換えられてポイされるような娘ですよ」

　母が達樹に向かって力説するので、璃子は思わず口を挟んだ。

「ちょっとちょっと、お母さん！　実の娘のことをそんなふうに言うのはあんまりなんじゃない？」

　璃子の不満を意に介さず、母が続ける。

「だから、藤岡さんもじっくり考えた方がいいと思うんです。この子、これでも今年二十八歳になるんですよ。また五年経って璃子が捨てられるところなんて、見たくないんです」

　璃子のことをけなしているのか心配しているのか、母の言葉がよくわからなくて、璃子は唇を尖らせた。