フキゲン課長の溺愛事情
「それって……」

 璃子に続いて両親も達樹を見る。

「それは、その……」

 達樹が両親を真剣な面持ちで見返して言う。

「結婚を前提に、このまま璃子さんと一緒に暮らすことをお許しいただけますか」

 彼の言葉で、リビングは水を打ったように静かになった。

 父がゴクリ、と喉を鳴らす音が聞こえ、菜子が静寂を破る。

「いいじゃん、お父さんもお母さんも。こんなにしっかりしてる人なんだからさ!」

 言って明るい声でけらけらと笑った。

「そうだよ、ここまで言ってくれる人を逃したら、それこそお姉ちゃんのもらい手がなくなっちゃうよ」

 そう言ってリビングのドアから、五歳年下の麻子(まこ)がひょいと顔を覗かせた。その絶妙のタイミングに、母が眉を吊り上げる。

「麻子! 立ち聞きしてたのね!?」
「立ち聞きだなんて人聞きの悪い。私は菜子姉(ねえ)を手伝ってお茶を運んできただけですーっ」
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