フキゲン課長の溺愛事情
 麻子は言いつつ、ちゃっかりリビングに入ってきた。そうして失礼にも、達樹を頭の先からつま先までじろじろと見ている。

「私はいいと思うけどな~。五年付き合ってもプロポーズの言葉すら言い出せなかったヘタレより、断然いいじゃん」
「麻子もそう思う!?」

 菜子がはしゃいだ声を上げた。

「うん! 璃子姉の元彼……誰だっけ……あ、そうそう山城さんか。あの人って、うちに来たとき、すんごく緊張してオドオドしてたし」
「その点、カチョーさんなら安心だよねー。見かけだけしっかり者で意外と抜けてる璃子姉にぴったりだよ。しかも、璃子姉にはもったいないくらいのイケメン!」

 菜子の言葉に、麻子も「そうそう、もったいないくらい!」などと言いたい放題だ。

「カチョーさんじゃない。藤岡くんだ」

 父が仏頂面で言ったとき、インターホンが鳴った。一番近くにいた麻子がインターホンのモニタを見る。

「あ、お寿司の出前が届いたみたいだよ~。私、受け取ってくるね!」
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