フキゲン課長の溺愛事情
「そう？　そういえば、達樹のご家族は？」

　なにも知らないな、と思う璃子に、達樹が説明を始める。

「父は大学教授で、宇宙物理学を研究してる」
「なんか難しそう」
「系外惑星っていう、太陽系の外にある惑星のことを調べているらしい」
「スケールが大きいなぁ」
「それから、母は料理教室の先生だ」
「えっ」

　そんな母親に育てられてきたのなら、達樹は舌が肥えてそうだ。なにも考えず彼に料理を振る舞っていたことに、璃子は今さらながら緊張してしまった。

「私の料理……実はあんまりおいしくなかったんじゃない？」
「それはない。母の作る上品なフレンチより、璃子の家庭的な肉じゃがの方が俺は好きだ」
「そう言ってもらえると……うれしいけど」
「ほかに、四歳年下の弟がひとりいる。医療機器メーカーで営業をしてる」
「そうなんだぁ……」
「今すぐじゃなくてもいいけど……俺の家族にも会ってもらえるかな？」

　璃子の手を握る達樹の手にわずかに力がこもって、彼の緊張が伝わってきた。璃子は彼を見上げてしっかりとうなずく。

「うん、ぜひ！　でも、すごく知的な会話をされそうでドキドキするけど」
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