フキゲン課長の溺愛事情

「安定した職業の彼氏を見つけて結婚するのが目標だったらしいし、和田さんにはちょうどよかったんじゃない？」
「でも、それで彼氏を盗られちゃたまんないけど」
「そうよねぇ。水上室長、気の毒だよね」
「そうだね。でも、私だったら元彼とそれを奪った女の結婚式なんて、絶対来たくないなぁ」
「仕方ないよ、会社関係者じゃ」
「それもそっか……。室長、新しい彼氏、まだできないのかな？」
「あんなことがあったら男性不信になるだろうし、無理なんじゃない？」

　璃子は自分がそんなふうに思われていたのか、と苦笑を漏らしそうになり、懸命にこらえた。

　前方から牧師の声が聞こえてくる。

「それでは誓いのキスを……」

　その言葉を受けて、花婿が花嫁のベールをそっと持ち上げた。参列者の頭の間を通して、友紀奈の澄ました顔が見える。啓一が緊張した面持ちで、顔を傾けてゆっくりと近づけた。

（唇にキスするのかな？）

　そう思ったとき、璃子の前にいた達樹がひょいっと振り返った。パッと目が合って、彼が微笑む。