フキゲン課長の溺愛事情
 ほかのみんなが花婿と花嫁の誓いのキスに注目する中、璃子と達樹は甘い笑みを交わした。

 やがて達樹が前を向き、牧師の重々しい声が聞こえてくる。

「ただいまおふたりの結婚が成立しました……」

 璃子が視線を祭壇に戻すと、誇らしげな表情の友紀奈と、照れた顔の啓一が並んでいた。

(おめでとう。これでもう和田さんも変な言いがかりをつけてこないよね)

 璃子は心の中でつぶやいた。独占欲丸出しの友紀奈は、達樹と同期のほかの女子社員にさえ、睨みをきかせていたものだ。

 式の進行通り、オルガンの演奏に合わせて賛美歌を歌い、新郎新婦がバージンロードを歩いて出口へと向かうのを拍手で送った。

 新郎新婦と両家の家族が記念撮影をする間、参列者はチャペルの外に集められた。係の女性が色とりどりの花びらを詰めたカゴを持って、璃子たちの間を回り始める。

「ご参列のみなさま、これよりフラワーシャワーを行いますので、どうぞご協力をお願いします。幸せなおふたりを賑やかに祝福してあげてください」
< 290 / 306 >

この作品をシェア

pagetop