フキゲン課長の溺愛事情
「ごめんなさい。璃子さんにはホント、申し訳ないことをしちゃいましたよね。でも、私たち、惹かれ合う気持ちをどうしても止められなかったんです。きっとこういうのを運命っていうんですねー。わかってくれますぅ? 私、璃子さんのぶんまで幸せになりますから、祝福してくださいねぇ」

 璃子はにっこり笑って言う。

「もちろん。過去のことはぜんぜんまったく気にしてないから、あなたも気にしないで」
「そういうわけにもいきませんよぉ。私が璃子さんの幸せを奪っちゃったんだから。罪悪感で胸が痛むんです。本当なら、ここに立っていたのは璃子さんかもしれないのにって」
「私はそんなこと思ってないから」

 璃子の言葉を意に介さず、友紀奈がわざとらしいくらい控え目な顔で続ける。

「代わりと言ったらなんですけど、璃子さんにはこのブーケをあげますね。もらったら次に結婚できるって言われてますから。でも、ヨーロッパの言い伝えだから、どこまで効果があるかはわかりませんけどぉ。璃子さんも結婚できるといいですねー」

 友紀奈が持っていた白いバラのブーケを差し出した。そんな嫌味のこもった言われ方をしたのに、ブーケなどほしくなかったが、ほかの招待客の手前、断るわけにもいかない。
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