フキゲン課長の溺愛事情
沙織に言われて期待してしまう反面、信じられない思いも湧き上がってくる。そんな璃子に沙織が訳知り顔で首を振る。
「タイミング的にもおかしくないでしょ。仕事が忙しくてすれ違いがちになって、改めて璃子の大切さに気づいた、とか。あり得る話だと思うけど」
「えー、そんなぁ。ちょっと、どうしよう! 私、藤岡課長の歓迎会なんかに行ってる場合じゃないかもぉ!」
璃子が頬に両手をあてたとき、沙織が璃子の背後を見て凍りついたように動きを止めた。その目には恐怖のような色さえ浮かんでいる。
「どうしたの?」
璃子は怪訝に思い、沙織の視線の先を追って振り返った。その瞬間、同じく璃子も凍りつく。視線の先、璃子たちのいる環境都市開発部広報室の狭いオフィスの入口に、今日の歓迎会の主役である藤岡達樹(たつき)が立っていたのだ。しかも両腕を組み、眉間にしわを刻んだ、このうえもなく無愛想な表情(かお)で。
「あ、か、課長。なにか……」
あわてて言いかけた璃子を気に留める様子もなく、達樹は沙織のデスクにカラーの薄いパンフレットをポンと置いた。
「タイミング的にもおかしくないでしょ。仕事が忙しくてすれ違いがちになって、改めて璃子の大切さに気づいた、とか。あり得る話だと思うけど」
「えー、そんなぁ。ちょっと、どうしよう! 私、藤岡課長の歓迎会なんかに行ってる場合じゃないかもぉ!」
璃子が頬に両手をあてたとき、沙織が璃子の背後を見て凍りついたように動きを止めた。その目には恐怖のような色さえ浮かんでいる。
「どうしたの?」
璃子は怪訝に思い、沙織の視線の先を追って振り返った。その瞬間、同じく璃子も凍りつく。視線の先、璃子たちのいる環境都市開発部広報室の狭いオフィスの入口に、今日の歓迎会の主役である藤岡達樹(たつき)が立っていたのだ。しかも両腕を組み、眉間にしわを刻んだ、このうえもなく無愛想な表情(かお)で。
「あ、か、課長。なにか……」
あわてて言いかけた璃子を気に留める様子もなく、達樹は沙織のデスクにカラーの薄いパンフレットをポンと置いた。