フキゲン課長の溺愛事情
(やっぱあの態勢が悪かったのかなぁ)

 脱力しきった璃子の腰に、背中に、肩に、達樹が慣れた手つきで服の上からほどよい圧を加えていく。

「んー、幸せぇ……」

 うっとりと息を吐く璃子に、達樹が真面目な口調で問う。

「璃子が幸せなのは、俺がこうして凝った璃子の体をほぐしてやっているからか? それとも、新婚旅行で俺と一緒にストックホルムに来てるからなのか?」

 達樹の望んでいる答えはわかっていたが、璃子はあえていたずらっぽく返す。

「それはもちろん……前者、かな?」
「ほぅ」

 ベッドにうつぶせになっているので見えないけれど、達樹が目を細めて不満の意を表しているのが璃子にはわかった。その表情を想像して、ふふっと笑ったとき、璃子の肩胛骨の辺りに触れていた達樹の手が離れた。顔の横に彼が手をついたかと思うと、耳に唇を押しあてられる。

「聞き捨てならないな」

 首筋がゾクゾクとして璃子の背中が反った。
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