フキゲン課長の溺愛事情
 あの結婚式のことは一生忘れない。

 けれど、璃子はそれを言葉にすることはできなかった。達樹に背中のブラジャーのホックを外されたのだ。

「達樹っ……チェックインしたらすぐ出かけるんじゃ……」

 達樹はかまうことなく璃子の腰に唇を押しあてる。

「機内食のチーズとデザートの不思議生物型のチョコレート、俺の分も食べて幸せそうにしてたと思ってたのに」
「ふ……不思議生物……って」

 達樹の唇が背中を這い上がり、彼の言葉に笑う余裕などもう璃子にはなかった。

「ん……っ」
「璃子」

 カットソーを脱がされ、上半身裸にされて、体を丸めようとする璃子を、達樹が仰向けにした。璃子はとろりとした眼差しで、最後の抵抗の言葉を口にする。

「市内観光は……?」
「ベッドで休憩してからでもいいだろ」

 達樹が口角を引き上げ、淡く微笑みながら、シャツのボタンを外していく。これ以上ないくらいの色気を見せられ、璃子は甘くため息をついた。
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