フキゲン課長の溺愛事情
(やっぱり達樹にはかなわない)

 こうなったら彼が止まらないことも……そして璃子自身もそんな彼を待ち望んでいることも……彼と付き合い始めたこの一年で、身に染みてわかっていた。

「ランチには絶対にミートボールを食べたいんだからね……っ」
「わかってる。新婚旅行初日だから手加減しておくよ」

 達樹が、笑ったままの唇を璃子の唇に重ねた。食むようなキスはすぐに貪るような熱い口づけへと変わる。璃子は重ねられた彼の胸が、自分と同じくらい高い鼓動を刻むのを感じながら、彼の逞しい背中に手を回した。

「んん……達樹っ」

 彼に与えられる快感は、さっきの指圧の比でないのはもちろんのことだった。



 異国の豪華なスイートルームで体を重ねるのは思ったよりも刺激的で、気づけば璃子は彼の上になっていた。頭の先まで快感に貫かれ、璃子はゆるゆると力の抜けていく体を、彼の熱い肌にくずおれるように重ねた。ベージュのカーテン越しに、午後の太陽がベッドに穏やかな明かりを投げかけているのが見える。

 体も心も満たされたほどよい倦怠感が気持ちいい。達樹の肩に頭を寄せて徐々に落ち着いていく彼の鼓動を聞いていると、そのまま眠りに落ちてしまいそうだ。璃子は目をつぶりそうになって、あわてて首を振った。

「寝てもよかったのに」
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