フキゲン課長の溺愛事情
(でも、なにより幸せなのは……)

「達樹と一緒にいられて幸せ。達樹に愛されて幸せ。達樹を愛せて幸せ」

 彼の首に両腕を絡めて引き寄せ、璃子からキスをした。達樹の唇が弧を描いて微笑む。

「一生、よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」

 達樹が璃子の左手を取り、真新しいプラチナの結婚指輪にキスを落とした。そしてその手のひらに唇を押しつける。

「シャワーを浴びて観光に行こうか。ここでこうしていると、このままベッドから出られなくなりそうだ」

 達樹がいたずらっぽく笑った。その眩しい笑顔がまた璃子の胸を熱くする。

 彼と一緒ならきっとずっと幸せ。なにがあっても乗り越えていけるはず。

 璃子は温かな気分でベッドに起き上がった。ひとりでベッドから下りようとして、うしろから手首を強く引かれる。すとんと腰を下ろしたところは、達樹の膝の上だった。背後から彼にふわりと抱きしめられる。

「ひとりでバスルームに行くつもり?」
「そんなわけ」
「もちろんないよな」
< 305 / 306 >

この作品をシェア

pagetop