フキゲン課長の溺愛事情
「俺の部屋だ」
「う……わ、あっ、きゃーっ!」

 璃子が反射的に悲鳴をあげ、達樹が眉間にしわを刻む。

「誤解のないように言っておく。おまえがあまりに青葉に迫るもんだから、青葉が気の毒になって、俺が水上を連れ帰っただけだ」
「じゃ、私、課長にお持ち帰りされたってことですか……?」
「連れて帰ったのはたしかだが、それはおまえが『啓一と暮らした部屋になんか帰りたくない!』とだたを捏ねて、周りの人間の手に負えなくなったからだ」

 達樹に淡々と説明され、璃子は恥ずかしさのあまり顔が熱くなるのを感じた。

「わ、私は……課長の歓迎会で……なんてことを」
「と言っても、もう一次会はお開きになるところだったから、ほかのメンバーは盛り上がったまま二次会に行っていた」
「青葉くんも……沙織も……?」
「青葉は二次会に行ったが、河原崎の方は帰ったようだ」
「それで、私と課長は……?」

 璃子は自分の体を見下ろした。多少しわが寄っているものの、昨日着ていたホワイトのカットソーもブラックのフレアスカートも身につけたままだ。脚をそっと触ると、ストッキングもきちんと履いている。
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