フキゲン課長の溺愛事情
「私は課長の部下ですよ?」
「知っている」
「こ、恋人でもなんでもない、ただ勤務先が同じってだけなんですよ?」
「知っている」
「そ、それに……」

 ほかに思いつくことがなくなって璃子が黙ったのを見て、達樹が口もとを緩めた。

「ほかに言いたいことは?」
「いえ、あの」
「青葉に絡んでいるのを聞いたが、水上は彼氏にマンションから早く出て行けと言われているんだろう? 行くあてがないと自分で言っていたじゃないか」
「はい、まあ」
「俺はスウェーデンから戻ったばかりで恋人もいないし、俺ひとりに2LDKのこの部屋は広すぎる。余っている部屋を有効活用してなにが悪い?」
「いえ、悪くはないと……思います」
「それなら問題ない」
「いえ、でも」

 璃子の言葉を聞いて、達樹がわずかに眉を寄せた。

「課長は……部下になってまだ二週間程度の私に、どうしてそこまでしてくださるんですか?」

 達樹は片手を顎にあてて、考えるような仕草をした。部屋の中を――ピンクのカーテンを――チラリと見てから言う。
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