フキゲン課長の溺愛事情
 璃子はぐっと右手で拳を作った。そんな彼女を見て達樹の唇が弧を描いた。

「それは頼もしいことだ。で、ランチはどこへ行く?」
「ちょっと待ってください。沙織に〝インタビューはランチでする〟ってメッセージを送らなくちゃ」

 璃子がトートバッグからスマートフォンを引っ張り出し、沙織にメッセージを送った。それをバッグに入れて、課長を見上げる。

「課長はいきたいお店とかありますか?」
「そうだな……。周りに会社関係の人間がいない店の方がいいだろうな」
「それじゃ、お店じゃなくて公園はどうです?」
「公園?」

 達樹が怪訝そうに言った。

「はい! 天気もいいし、サンドウィッチをテイクアウトするっていうのはどうでしょう? 近くの隠れ家的ベーカリーがお気に入りなんです」
「なるほど、それも悪くなさそうだな」

 達樹がのってくれたので、璃子は彼を案内すべく、先に立って歩き出した。



 そうして璃子お薦めのベーカリーでパンと飲み物を買った後、マンションと図書館の間にある小さな公園に向かった。ちょうど昼食の時間になるので、幼児を連れた母親たちが公園から出てきてすれ違った。璃子たちは滑り台の横にあるベンチに並んで座る。
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