フキゲン課長の溺愛事情
 なにしろ達樹は無愛想とはいえイケメンだし、海外帰りの三十二歳の課長なのである。熱い視線で見ている女性社員がいるのは、彼の歓迎会で見て知っている。

「好みの女性はどういうタイプですか?」
「そういう質問にはノーコメントだ」

 真顔で言われて、璃子は小さく舌を出した。

「冗談ですってば。真面目にやります。まずは……インタビューをするとき、必ず全員に訊いている質問です。就職するときになぜOSK繊維開発を選んだんですか?」

 達樹はホットコーヒーをひと口飲んでから口を開いた。

「俺が就職活動をしてた十年前、OSK繊維開発が産業繊維開発企業を吸収合併しただろ?」
「はい」
「そのとき新事業を展開するために人材を募集しているのを見て、一から企画できるなんておもしろそうだな、と思って応募したんだ」
「一から計画できるなんておもしろそうだな、と思った、ですね」

 璃子がつぶやきながらメモしていると、達樹が言う。

「水上も就職したときに広報室が新設されただろ?」

 璃子は顔を上げて答える。
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