フキゲン課長の溺愛事情
第五章 上司と部下の不思議な関係
その日の仕事の後、璃子は会社から帰ると、啓一と三年間暮らした部屋から出て行く準備に取りかかった。
荷造りが終わってから連絡をすれば、達樹が車で迎えに来てくれることになっている。
「まずはここから……」
この二日、足を踏み入れていなかったベッドルームに入った。遮光カーテンが閉じられた薄暗い部屋に、啓一の姿を探してしまいそうになる。
(いるわけないのに……)
誰もいないダブルベッドを見つめて感傷に浸る。あたり前のように眠っていたベッド。それとも今日でお別れだ。
「啓一……」
璃子はいつも彼が寝ていた側のシーツを手のひらでなでた。
(私が出ていったら、和田さんがここで啓一と一緒に寝るんだよね……)
悔しい、悲しい、腹立たしい。ひと言では説明できない感情が璃子の胸に湧き上がる。それでも、出ていかなければ、今日の友紀奈の剣幕から、近いうちに鍵を変えられてしまうだろう。そうなったらもっとみじめだ。
荷造りが終わってから連絡をすれば、達樹が車で迎えに来てくれることになっている。
「まずはここから……」
この二日、足を踏み入れていなかったベッドルームに入った。遮光カーテンが閉じられた薄暗い部屋に、啓一の姿を探してしまいそうになる。
(いるわけないのに……)
誰もいないダブルベッドを見つめて感傷に浸る。あたり前のように眠っていたベッド。それとも今日でお別れだ。
「啓一……」
璃子はいつも彼が寝ていた側のシーツを手のひらでなでた。
(私が出ていったら、和田さんがここで啓一と一緒に寝るんだよね……)
悔しい、悲しい、腹立たしい。ひと言では説明できない感情が璃子の胸に湧き上がる。それでも、出ていかなければ、今日の友紀奈の剣幕から、近いうちに鍵を変えられてしまうだろう。そうなったらもっとみじめだ。