フキゲン課長の溺愛事情
第六章 秘密の同居
 どこか遠くの方からかすかに電子音が聞こえてきた。その耳障りな音は少しずつ大きくなる。

(でも、すんごく遠くで鳴ってるから、きっと私のスマホじゃないよね……)

 気持ちのいい眠りから引きずり出されまいと、毛布を頭の上まで引き上げた。そうして無視を決め込んだものの、いつまで経っても鳴りやまない規則的な高音が、神経に障り始める。

(うるさいなぁ……もう、啓一ってば早く止めてよね……)

 けれど、彼がスマホのアラームを止めてくれるはずはない。

(あ、そっか。啓一、もう仕事に行っちゃったんだぁ……)

 ぼんやりしたまま毛布の中から手だけを伸ばした。あちこち探ってスマホを探そうとするが、見つからない。

(どこに置いたっけ……)

 逆側を探そうと寝返りを打ったとたん、ソファベッドからずり落ちた。

「きゃ」

 堅いフローリングの床にごろりと転がる。高さがないのでほとんど痛みを感じず、再び毛布にくるまった。ほどなくしてアラーム音が消えて静かになる。

(はぁ、やっと静かになった。スヌーズ設定してるし……次で起きよう……)
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