君を想う


重い鞄を抱えて一階フロアに降りて行くと藤崎斗真は来客用の椅子に座っていた。


「藤崎さん、鞄を持って来ました」


「おっ、やっと来たか。遅いんだよ」


「せっかく鞄を持って来たのに酷くないですか。それに、この鞄重すぎです。余計なものが入ってるんじゃないですか?」



「余計なものなんてない。全部必要なものだ」


「そうなんですか。そんな重い鞄を毎日持ち歩いて大変ですね」


「別に」


持っていた鞄が藤崎斗真に渡ると急に重みが無くなった。


「帰るぞ」


さっさと歩き出した後を慌てて追いかけた。


「そういえば中里の誘いを断ったんだって?」


「えっ……」


今日の昼間、中里さんに飲みに行こうと誘われて断った事を思い出した。


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