君を想う


あの日見た男の人に似てた。
本人だったりして……。


スマホが振動していた。
電話だ。


『たしか青色だったよな?』


『そうです』


『2本あるけど花柄か、それとももう1本の』


『それです』


藤崎斗真の『分かった』という返事が聞こえて直ぐに切れて、そのあと戻って来た。


「こっちで良かったんだよな」


「それです。ありがとうございます。」


差し出された傘は畳まれたままだった。


「差してこなかったんですね。さっきよりも濡れちゃってるじゃないですか。これで髪だけでも拭いて下さい」

借りていた傘を返してハンカチを渡そうとしたけど「いい」と断られた。


でも、こんなに濡れていたら気になる。
持っていたハンカチで藤崎斗真の髪を拭き始めたけど。

「やっぱりハンカチじゃ拭ききれませんね」


「もう、いいから」


「えっ!?」


拭いていた手を止められてしまったそして藤崎斗真は姿が自分がさしている傘のなかに私を入れた。


「結局、濡れてるし取りに行ったのに意味ないだろう」


「……すみません」


今日は何で、こんなに優しいんだろう。
傘を取りに行ってくれたり濡れると言って自分の傘に入れてくれたり……そんな藤崎斗真がある人と重なって見える。
あの時みたいにドキドキした……。


このあと、表通りに出たらちょうどタクシーがいて乗る事が出来た。
藤崎斗真と同じタクシーに乗り私は買いたいものがあったから家の近くのコンビニで降りた。



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