君を想う


「うん、思い出した。あの人、藤崎さんと仕事の契約をした人だ」


「そうなんですか?」


「ちょうどその時、喫茶室でコーヒー淹れたの私だったから顔に見覚えがあったなと思って。私の淹れたコーヒーを美味しいって言ってくれた人だしね」


そういえば、そんな事があったな。
わざわざここに来て契約が取れたのは瞳子さんのおかげだと嬉しそうに話して行ったっけ。


「その仕事ってうちの社の他にもう一社候補がいて、どちらかに任せるって事で藤崎さんと営業部の人で何度も相手の会社に足を運んでやっと取った契約なんだって」


だから、あんなに嬉しそうに話していたんだ。


「契約取れたのは瞳子さんのコーヒーのおかげだって藤崎さん言ってましたよ」


「まさか、さっきの人はコーヒーが美味しいって言ってくれたけど、そんなのは契約に関係ないよ。
きっと何度も足を運んだ藤崎さんの熱意が伝わったんじゃないかな。
さっきの人、大変な事って言っていたけどもしかして契約がダメになったとかじゃないよね」


< 123 / 202 >

この作品をシェア

pagetop