君を想う
「失礼します」
声を掛けてから喫茶室の中に入ると藤崎斗真一人しかいなかった。
さっきは、たしかに二人分頼まれたのに帰ってしまったのかな……。
「佐田さんて方は帰ってしまったんですか?」
「佐田さんは会社に電話を掛けているだけだから暫くしたら来ると思う」
「じゃあコーヒーは二人分でいいんですね?」
「佐田さんの分も頼む」
「分かりました。あの……大丈夫ですか?」
「?」
「あの人が見えたとき、様子がただ事じゃないようだったから瞳子さんと心配していたんです」
「ちょっとゴタゴタしたけど、とりあえず落ち着いたよ」
「じゃあ、仕事の方は大丈夫なんですね?」
返事がなかった。
余計な事を訊いちゃったかな……。
「すみません。関係ないのに余計なお世話でしたね。でも、ずっと気になっていたんです」
「藍川が気にかけてくれてたなんて、思わなかった、ありがとう。佐田さんとは話しをして誤解が解けた。これまで通り契約は続行だって言ってくれてさホッとしたよ」