君を想う


最初は、毒舌を吐かれたショックで譲られたコーヒーなんて飲む気がしなかったけど……ふわぁっと香りがしてきて自然と手がカップを口元に運んでいた。

あまりコーヒーは飲まないけど美味しいと感じてしまった。
インスタントコーヒーなのに淹れ方を少し変えるだけでこんなに味が変わるなんて……思わなかった。


あの人の淹れたコーヒーは美味しかったけど。
でも、あんな言い方……やっぱりムカつく。


モヤモヤとしたまま喫茶室を出て受付に戻った。


「里奈っ、さっき藤崎さんが来客と一緒に喫茶室に入って行ったでしょ?」


「藤崎さん……?」あっ!!瞳子さんの言っていたいい男。


戻るなり興奮状態で瞳子さんは訊いてきたけど今はそれどころじゃない。

落ち込んで戻って来たのに……さっきの来客のなかに瞳子さんの憧れのイケメンがいるとかそんな話し冷静に聞ける状態じゃ……!?


「……瞳子さん、今言った事をもう1度言って貰えます?」


「もう1度?だからね、藤崎さんが喫茶室に入って行ったでしょ?て言ったの。
今度こそ顔を見たのよね?彼イケメンだったでしょ?」



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