君を想う
「瞳子さん、来客は一人ではなくて二人に変わったんじゃないんですか?」
「えっ、違うよ。来客は予定通り一人で、そこに何故か藤崎さんも一緒に喫茶室に入って行ったのよ」
二人のうち片方が社内の人間……。
一人は小柄でメガネをしていた。瞳子さんが言ってたスラっと背が高いという藤崎さんとは程遠い。
もう一人は私に残念な受付嬢と言い放ったあの男の人。
「背が高くて、黒髪のイケメン……」
「そう、来客はメガネを掛けていたから今度は直ぐに分かったでしょ?」
あの男の人……社内の人だったんだ。
たしかに藤崎という人はイケメンだったけど。
でもあの人が瞳子さんの言っていたいい男……にはイメージが程遠い、おまけに口も悪いし。
「瞳子さん、その藤崎さんの事なんですけど」
「藤崎さん?喫茶室で何かあったの?」
「それがっ」
「あら、外線。話しは後でね。―――――――」
その電話はクレームで暫くガタガタしてしまい瞳子さんに喫茶室の事は話せなかった。