君を想う



「藤崎さんが話したら私も話すなんて言ってませんよ」


「この間から気になって仕方ないんだ。
あんな藍川は初めてだったから……
あんなふうに庇うから藍川にとって特別な何かがあるんじゃないかって……。
そう考えたらやっぱり気になるんだ」


気になるって言われても……。


たしかにあの人に逢えたことは私には特別で大切な思い出になっている。
楽しいだけじゃなくて辛い思いもしたけど……。
今の仕事に就けたのはあの人が励ましてくれたから。


「高1の夏休み初めてあの人に合いました。……絡まれている私を助けてくれたんです。その人は小説とかのヒーローみたいでカッコよかったんです……」



「へー……」


最初は話すつもりなんてなかったのに。
なぜだろう……急に藤崎斗真にあの人の事を聞いてほしくなって話してしまった。


話し終わると藤崎斗真が訊いてきた。


「ちょっと訊いていいか?」

「何ですか?」


「藍川は、その男に会えたら、受付嬢になれたって報告したいって言ってたよな?
もしも、その男が近くにいるって分かったら会いたいか?」

「えっ、近くにですか?」

「もしもの話しだ……どうしたい?」






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