君を想う
「もしも、近くにいるなら……会いたいです。さっきも話しましたけど受付嬢になれたのは、あの人が頑張れって言ってくれたからです。
会いたいです」
「そうか、その男と会えるといいな。……そうだ、さっきした元カノにフラれた話しは他言無用だからな。あの話しはお前だけにしかしてない。分かったな?」
「そうなんですか?中里さんも知らないんですか?」
「中里のヤツ、噂を聞き付けてしつこく訊いて来たけど……フラれた元カノに追い回されていたなんて中里にも誰にも知られたくない」
そうか……中里さんは知らないんだね……。
「藍川、何をニヤニヤしてるんだ?変なことを考えているんじゃないだろうな?」
「何も考えてないです」
ただ……話しを聞き出すためにした事でも、仲のいい中里さんにも話してないことを私に話してくれたなんて……。
「誰にもって、私に話してしまって良かったんですか?」
「今さら、そんなことを訊くのか?
外に洩らさなきゃいい。
おかげで気になっていたお前の話しが聞けたしな」
私達はお互いの過去を知ったって事になるんだよね。
他の社員も中里さんも、あの女の人が元カノで何年も前に藤崎斗真と別れているなんて知らないし。
私のあの思い出も知っているのは藤崎斗真だけって事になる。