君を想う
藍川の事が必要以上に気になっていた。
藍川といると、ある出来事を思い出す。
彼女と藍川……どうしても重ねて見てしまう。
喫茶室で彼女にコーヒーを淹れて貰う機会がやって来た。
藍川にさんざん酷い言葉を浴びせた。
俺の言ったコーヒーの淹れ方なんて無視して淹れるものだと思っていたのに……違った。
「90点てとこか」
「うわぁっ!!」
声をかけると驚いた声を出した。集中していて俺に見られていた事は気付いてなかったようだ。
「いつから、いたんですか?」
「お湯を沸かしているあたりからだ。カップ温め忘れただろう?」
「あっ!……」
藍川はこの間、言ったことを覚えていた。
ただ1ヶ所だけカップを温める事を忘れてはいたけどあとは、教えた通りに淹れてくれた事に感心した。
それから、もっと彼女の事を知りたくなった。
だけど藍川は隙を見ては逃げ出そうとする。
お互いに打ち明け話しをしたあの日二人の距離が縮まった気がした。