君を想う


あっ……。
例の毒舌イケメンが車の窓から顔を出した。
今日はこの人と余程縁があるらしい、こんなところで会うとは。

お昼休みはとっくに過ぎたはずなのに何故。


手招きされて恐る恐る車に近付いた。


「……な、何か私に用ですか?」


「お昼休みはとっくに終わったはずなのに、こんな所でうろうろしているなんて余裕だな」

バカにしたような言い方にムッとなった。


なんなの?この人……。
嫌みを言うためにわざわざ停まったの?
喫茶室の時も今も何で不快な事ばっかり言うの。


「仕事なめてんの?」


「なめてません。ご存知ないかもしれませんが私のお昼休みはまだ少し残ってます。受付は皆よりも遅れて交代で取ることになってるんです。あなたの方こそお昼休みは終わっているのに大丈夫なんですか?」


「取引先の会社に行っていた。今、帰りなんだ。
そうか……受付は遅れてお昼休みを取るんだな………知らなかった……」


さっきまで責めるような口調で話していたのが急に毒気を抜かれたように勢いが無くなってしまった。


口を開かなければ爽やかなイケメンのままなのに。


「急いでいるようなら、乗せてこうと思ったけど必要ないようだな」


もしかして……走らなくても済む?




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