君を想う


瞳子さんの戸惑った声が聞こえた。

「じゃあ、藍川里奈さん、コーヒー頼んだよ」。


「あの、ちょっと……」


呼び止める間もなく行ってしまい。
隣からは殺気を感じた。


「り~な~、どういう事?」


ビクッ!!


「とっ、瞳子さん……とりあえず落ち着きましょう。ね?」


「落ち着きましょう、ね?、じゃないわよ。ちゃんと説明しなさいと言いたい所だけど今は時間がないし早く行ってコーヒーを淹れて来なさいよ」



急かされて喫茶室の前まで来て躊躇してしまった。


実はあの日、家に帰ってから言われた通りに淹れて見た。
でも……何かが違ったのか藤崎斗真が淹れたコーヒーのように、いい香りは出せなかった。


もともと、コーヒーより日本茶や紅茶の方が好みで家でもコーヒーはほとんど飲まない。
ただ家では父だけがコーヒーを飲むためインスタントコーヒーは常備してあり、会社でコーヒーを淹れる時は家で見ていた通りに淹れていた。


基本的な事と分量が合っていればインスタントコーヒーの味なんてほとんど差はないと思っていたけど違った。


とにかく、やって見るしかない。



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