君を想う
「君、違ってたらごめん。もしかして前に開発事業部にいなかったかな?
半年程いた事があったよね?名前はたしか……」
「宮内瞳子です。覚えていてくれたんですか?
嬉しいです」
突然、話しの主が現れてビックリした。
「そうそう、宮内さん。良かった、人違いじゃなくて。ところで今、俺の事を話してなかったかな?」
さっきの話しを聞かれた?
「会ったばかりの人に酷いことを言うはずないだろう。この人の勘違いだよ。残念な受付嬢なんて言ってないから」
勘違いなんかじゃない。この耳でちゃんと聞いたんだから。
「でもっ、たしかに」
「それは君の勘違いだって言ったはずだよ。分かった?」
優し気な口調なのに目は笑ってなくて、『余計な事は言うな』と無言の圧力がかかりこれ以上何も言えなくなってしまった。
「そうですか。やっぱり里奈の勘違いだったんですね」
瞳子さんは、藤崎斗真の言った事を信じてしまった。
「分かって貰えて良かった。じゃあ片付けよろしく」
「里奈」
基本、お茶を出した人が片付けることになっているから必然的に私が片付けに行かないといけない。
「……片付けに行ってきます」
「お願いね」
「あっ、そうだ!宮内さんは――――――」
歩き始めた私の耳に藤崎斗真が何やら瞳子さんと話しているのが聞こえてきたけどシャットアウトして喫茶室に向かった。