君を想う


二人に紅茶をいれて喫茶室を出た。


「あっ里奈、さっき営業部のエースが喫茶室を使いたいって来たけど?」


「営業部のエースなら喫茶室にいる時にちょうど来て。田辺さんも一緒だったから二人分の紅茶をいれて来ましたよ」

「じゃあ大丈夫ね。あっ、そうだ、藤崎さんから聞いたんだけどインスタントコーヒーを美味しく淹れるにはコツがあるんですって?里奈は教えて貰ったんでしょ?そういう事は私にも伝えてね」



「すみません。言いそびれてました」


「仕方ないわね。今度から気を付けてよ」



「はい」



一時間ぐらいして営業部のエースが内線で片付けてほしいと電話をして来た。
喫茶室に行くと入り口のドアの所で田辺さんがいて会釈すると声を掛けて来た。



「あの、藍川さん」


「どうしたんですか?中に忘れ物でも?」


「いいえ、忘れ物はしてないんですが……」


忘れ物じゃないんだ。



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