君を想う
もう歩けない。
急ぐのなら勝手に行ってよ。
立ち止まったはずが……。
「走れっ」
「えっ!?」
なぜか藤崎斗真に腕を掴まれながら駅まで一気に走っていた。そのおかげで電車にもぎりぎりで間に合ったけど。
「はぁ、はぁ、くるし……も、次で……いいって言ったじゃないですか……」
「でも、間に合ったぞ」
こっちはまだ息が切れて苦しいのに、この人はぜんぜん息切れしてない。全然平気みたい。
「あんなに走ったのに……平気なんですか?
「これくらい、軽い運動をしたようなもんだ。お前が体力無さすぎなんだよ。ほとんど座りっぱなしの仕事の上に運動だってしてないんだろう?ちょっとは鍛えたら?なんなら付き合ってやろうか?」
「……いいえ、結構です」
一瞬、藤崎斗真に後ろから追いたてられて必死に走る自分を思い浮かべてしまい、ゾッとしてしまった。
電車が動き始めて暫くするといつも、決まって大きく揺れる場所があり、体が傾き向かい合って立っている藤崎斗真の体に倒れこんでしまい背中に何かが触れた。