君を想う


月曜日、会社に着き更衣室に行くと総務の観月さんが中から出てきた。


「あっ、観月さんおはようございます」


「ちょうど良かった。ちょっといい?」


「どうしたんですか?」


観月さんは、私の手を引いて更衣室の隅に来るとちょっと小さい声で訊いてきた。


「藍川ちゃんて、田辺さんと付き合ってるの?」


「へっ?」


「さっきね、経理部の女子達が話しているのが聞こえて来たの」


「どんな話しですか?」


「それがね、その中の一人が昨日、藍川さんと田辺さんが一緒に歩いているのを見たって言い始めて。
それでね、付き合っているんじゃないかって話しになったみたい。その子、他の部の子達にも話していたしちょっと心配になって」


昨日、田辺さんと一緒にいたのを見られたのか……。

「違いますよ、田辺さんとは付き合ってないです」


「その子の見間違いってこと?」


「それは……昨日、ちょっと事情があって一緒に映画には行ったんです。でもそれだけで田辺さんとは何もないです。信じてくれますか?」



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