君を想う
「少しの間なら大丈夫、掛けてきていいよ」
「すみません。掛けてきます」
スマホを手に持ち、場所を移動し番号を登録して、そのまま掛けた。
『はい?』
『あの、藍川です』
『藍川さん。すみませんでした』
田辺さんは電話に出るなり突然謝って来た。
『どうしたんですか?』
『僕と映画に行った事が原因であらぬ噂がたってしまったと聞きました』
田辺さんの耳に入ってしまったんだ。
『軽率でした。本当にすみませんでした』
噂は田辺さんのせいではない。
『謝らないでください。田辺さんは別に悪くないんですから』
『いいえ、映画に誘ったのは自分です。そのせいで藍川さんに不快な思いをさせたのは事実なんですから……申し訳ないです』
『大丈夫です。噂を流した人達は勘違いに気付いて訂正してくれたし、もう変な噂も流れてないです』