君を想う
背中に向かって思い切りアッカンベーをするといきなりこっちを向くから驚いた。
藤崎斗真も驚いたような顔で暫く無反応が続き今度は頬をピクピクひきつらせ例の悪魔の顔に豹変した。
「お前……なにやってんの?」
「え~と目にゴミが……片付けて来ます」
エレベーターに乗り一階を押した。
バカな事した。
それに目にゴミがなんて苦しい言い訳までしちゃったし。
呆れたかな。
エレベーターが一階に着き、そのまま裏口に行くと。
「あっ!あった」
汚れた水を排水溝に捨てて見回すと水道があった。
水道からきれいな水を出し絞りバケツにため始めた。お掃除用具は総務が管理していたと思うんだけど勝手に持ち出して大丈夫かな……。
モップをためた水の中で濯ぎ足でペダルを踏みながら絞った。
「藍川」
聞き覚えのある声で呼ばれて振り向くと藤崎斗真が息を切らし必死の形相で立っていてギョッとした。
なっ、何?もしかしてさっきの事で怒ってる?
ヒョイっと右手が上がって……ウソ……叩かれる……思わず眼を瞑った。
「貸せ」
「へっ……?」
「しまうなら、しっかり絞った方がいい」
持っていたモップを藤崎斗真に渡した。