ずっと好きだったんだよ 番外編 ~悠也 side~
「……櫂?久しぶり」


高橋先輩は俺達のそばまで来て、仲良さげに奈緒と話している。

俺はその事より、奈緒が高橋先輩の事を“櫂”と、名前で呼んだ事が気になっていた。


大学生の頃。

みんなで集まってご飯を食べている時に、一度だけ、高橋先輩が来た事がある。

その時、奈緒は高橋先輩の事を“先輩”と呼んでいた。


でも、今、名前で呼んだよな……?


それだけ二人は親しいという事。

付き合っていたのだから、名前で呼び合っていてもおかしくはないのだけど……

仲良さげな二人を見て、俺は少しイライラしていた。


奈緒の事は友達だと思っているのに、何でこんな嫌な気分になるんだ?


その時。


高橋先輩に耳元で何かを言われた奈緒の顔が真っ赤になる。

俺はそんな奈緒の照れている表情がすごく可愛く思えた。

でも、それは俺達の前では見せた事のない、初めて見る表情。

そんな表情を高橋先輩の前では見せている。

俺は、それがすごく悔しかった。


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