人格障害の子に恋をした
新しい春(ヒロイン目線)

  絶望

 新藤くんからラインが来た。

『彰:今日はありがとう。話せてよかったよ。』

特に目的もないのにラインを送ってくる男なんて居ない、と私は思っている。もしかすると、新藤くんは私に気があるのかもしれないな、と思った。

簡単に人を信頼してはいけない。とくに男の人は、自分のことしか考えていないし、最後は必ず裏切るからだ。


『沙希:こちらこそありがとう。変な話してごめんね。』

それなのに、私は当たり障りのないような返事をする。人から嫌われることを極度に怖がってしまう自分がいるからだ。
 
私は自分の本当の性格を誰にも見せるわけにはいかない、と潜在的に思って生活している。だから、帰りに浪人の話や希望の大学に入れなかったことを、ほぼ初対面の新藤くんに話したことを後悔していた。


『彰:変な話って?』

人からしてみれば大した話でもないのだな、と自分が惨めに思えた。少しイラついてさっさと返信をした。

『沙希:看護師になりたくないこととか、浪人とか。』

人と仲良くなることは怖い。特に男の人は怖い。だからもう、新藤くんとのやりとりは終わりにしたかった。

『彰:話しづらいことも話してくれてありがとう。』


優しい返事に、急に気分が変わった。新藤くんを遠ざけようとしていた自分の心を責め、こう送った。

『沙希:新藤くんは、優しいね。だから、とっても話しやすいよ。』

返事が来たのは数時間後だった。私の言い方、馴れ馴れしかっただろうか。

『彰:帰りの方向も同じだし、これからも帰りに色々話そうよ。』

はやくラインのやり取りを終わりにしないと、気がおかしくなりそうだった。

『沙希:うん!ありがとう。じゃあ、おやすみなさい。(スタンプ)』 

これに対しての返事は来なかった。私は一気に疲れて、ベッドに倒れ込んだ。眠くはない。そもそもここ数年あまり夜、眠くならない。

深いため息をひとつついた。


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