人格障害の子に恋をした
軽音
放課後に、軽音サークルの集まりがあった。
僕は、新入生歓迎会の時に、その場の流れで、同じ学科の自分を含めた男子2人と、他の学科の女子3人の計5人のバンドに既に入っていた。バンド名はこれまた流れというかその場のノリで決めた「Hand Claps」である。
今日の集まりの目的は、先輩から、サークル室でのルールや、アンプやミキサー、マイクなど機材の説明を受けることだった。
説明が終わると、サークル長が言った。
「まだバンドが決まってない人達もいるみたいだから、ちょっとした交流会をしようと思います。用事がある人は帰ってもいいよ。」
僕はバンドが決まっていたので、交流会に参加する必要はなかったが、特に用事も無いのでそのまま残ることにした。
「これは私からの差し入れ!」
何か重たそうな箱を持ち上げて、どん!とそれを床に置いた。
「まあサークル費から出したから嘘になるね。適当にジュース買ってきたから、一人一本持って行って。そしたらじゃあー、今から30分間自由時間にするから、今固まってる場所からバラバラになって、なるべく沢山の人と挨拶して、ちょっと話してみてね。23人だから全員は無理だろうけど、はい、頑張って!スタート!」
なんだこれ。小学校のクラス替え後の交流会のようだ。サークル長は和やかな雰囲気を持ち合わせてはいるが、場を仕切るのが上手いしっかりとした女性で、まるで小学校の担任の先生のように感じた。
僕の視界に、あの子が入った。町田沙希…。大人しそうで、話しかけづらい。少し見ていると、他の男子学生に声をかけられて、どうやら楽器の話をしているようだった。
「新藤くん、だっけ。」と背後から声をかけられた。振り返ると元気の良さそうな女の子が居た。「あ、はい。」と答えると彼女は話し始めた。
「私は紺野真紀。新藤くん、ベースやってるんだよね?もうバンド決まっちゃった?」
「ごめん。もう決まってるんだ。」
「掛け持ちできない?私はしてるよ。一つはボーカルで、もう一つはドラム叩いてる。」
正直なところ、あまり忙しくなるのは嫌だった。掛け持ちの要請に対しては乗り気ではなかった。
「へぇ、掛け持ちしてるんだ。」
「私がドラムのバンドでさ、ギターはもう決まってるんだけど、ベースが居なくてね。」
かなり本気でお願いをされている、と気がついた。
「ボーカルは居るの?」
「まぁボーカルなら何とか探せばいるでしょ、と思って。お願い。無理かな?」
無理なときはきっぱり無理、と断れないのが僕の悪い癖。
「ギターは誰?」
「新藤くん学科も違うし多分知らないと思うけど、町田沙希ちゃん。知ってる?」
その名前に、僕の表情が変わった。ドクン、ドクンと、自分の心音が聞こえてきそうだ。
「名前と顔は一致してるよ。だってほら、新入生歓迎会のとき、全員自己紹介したから。」
誰に責められているわけでもないのに、町田沙希の名前に動揺した自分を落ち着かせるために、言い訳のような答え方をしてしまった。
「どう?掛け持ちしてくれる気になった?」
僕は戸惑った。
僕は、新入生歓迎会の時に、その場の流れで、同じ学科の自分を含めた男子2人と、他の学科の女子3人の計5人のバンドに既に入っていた。バンド名はこれまた流れというかその場のノリで決めた「Hand Claps」である。
今日の集まりの目的は、先輩から、サークル室でのルールや、アンプやミキサー、マイクなど機材の説明を受けることだった。
説明が終わると、サークル長が言った。
「まだバンドが決まってない人達もいるみたいだから、ちょっとした交流会をしようと思います。用事がある人は帰ってもいいよ。」
僕はバンドが決まっていたので、交流会に参加する必要はなかったが、特に用事も無いのでそのまま残ることにした。
「これは私からの差し入れ!」
何か重たそうな箱を持ち上げて、どん!とそれを床に置いた。
「まあサークル費から出したから嘘になるね。適当にジュース買ってきたから、一人一本持って行って。そしたらじゃあー、今から30分間自由時間にするから、今固まってる場所からバラバラになって、なるべく沢山の人と挨拶して、ちょっと話してみてね。23人だから全員は無理だろうけど、はい、頑張って!スタート!」
なんだこれ。小学校のクラス替え後の交流会のようだ。サークル長は和やかな雰囲気を持ち合わせてはいるが、場を仕切るのが上手いしっかりとした女性で、まるで小学校の担任の先生のように感じた。
僕の視界に、あの子が入った。町田沙希…。大人しそうで、話しかけづらい。少し見ていると、他の男子学生に声をかけられて、どうやら楽器の話をしているようだった。
「新藤くん、だっけ。」と背後から声をかけられた。振り返ると元気の良さそうな女の子が居た。「あ、はい。」と答えると彼女は話し始めた。
「私は紺野真紀。新藤くん、ベースやってるんだよね?もうバンド決まっちゃった?」
「ごめん。もう決まってるんだ。」
「掛け持ちできない?私はしてるよ。一つはボーカルで、もう一つはドラム叩いてる。」
正直なところ、あまり忙しくなるのは嫌だった。掛け持ちの要請に対しては乗り気ではなかった。
「へぇ、掛け持ちしてるんだ。」
「私がドラムのバンドでさ、ギターはもう決まってるんだけど、ベースが居なくてね。」
かなり本気でお願いをされている、と気がついた。
「ボーカルは居るの?」
「まぁボーカルなら何とか探せばいるでしょ、と思って。お願い。無理かな?」
無理なときはきっぱり無理、と断れないのが僕の悪い癖。
「ギターは誰?」
「新藤くん学科も違うし多分知らないと思うけど、町田沙希ちゃん。知ってる?」
その名前に、僕の表情が変わった。ドクン、ドクンと、自分の心音が聞こえてきそうだ。
「名前と顔は一致してるよ。だってほら、新入生歓迎会のとき、全員自己紹介したから。」
誰に責められているわけでもないのに、町田沙希の名前に動揺した自分を落ち着かせるために、言い訳のような答え方をしてしまった。
「どう?掛け持ちしてくれる気になった?」
僕は戸惑った。