B級恋愛
1 ボイコットとデート
この日ほど自分が惨めだと感じたことはない。今日は妹の結婚式…

お約束の進行でお約束の通りに進んでいる
「キョウちゃんも早くいい人見つかるといいね」

両親の親戚たちはこぞってこう言ってくるその度に愛想笑いを振り撒かなければならない。もう何回こんなことをやったのだろう
―――本当…

(冗談じゃないよ!)

何度こんなことを思ったか…

相崎杏子は36歳、独身。
相崎家の一番上。

今日は妹の結婚式。はっきり言って出たくて出ているのではない―――お互いこの話になると喧嘩ばかりしていたのだから…
そして妹の旦那―――義弟の事を好いてはいない。理由は簡単。

「禿げているから」

たったそれ位の事。しかし、されどの事である。相崎家男性陣は禿の血筋を間違いなく引いている。その中に更なる禿が来れば……禿げ一族の確定だ。男性陣は皆禿げるかもしれない。

そして年齢。義弟は杏子よりも年上なのだ。そんな男に「お義姉さん」なんて呼ばれたくない。更に自分が老けるような気がするのだ。だから絶対にそう呼ばせるかと心に誓った―――自分の弟は一人だと言い聞かせ続けて…

外に出たのは何度目だろうか。梅雨時期特有のジメジメ感と妙な熱気に吐き気を感じる。オッサンたちの余興は楽しくなんかない。

そればかりか妹の旦那の会社関係者の中には彼女も知っている人が何人もいていづらいのもある。こんな事を言ったら父親はもっといづらいだろうが仕方ない。妹の旦那は父親の元部下なのだから―――
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