SEXY-POLICE79
《ムダダ ソノオンナ二ナンジラノコエナドキコエヌ!》

「黙れ!」

声なんて聞こえなくてもいい。せめて彼女をもとに戻してやってくれ。
愛する人を失い、哀しみに打ちひしだれた彼女の心を。お前ならできる。

女の頬に一筋の雫がこぼれる。桐野の声が彼女の心に届いたのか。

《バカナ! アリエヌ》

舜は驚然とする。


わかっていたのよ。
こんなことをしたってあの人は喜ばない、帰ってきやしないんだって。でも、愛していたの。本当に、本当に愛していた。離れたくなかった。あの人は優しい人だから、きっとあの女の願いに逆らえず仕方なく結婚したんだって、ずっと頭に言い聞かせてきた。でも駄目なの。この想いだけはどうにも抑えられない。だって愛しているんだもの。あなたにだって男ならこの想いを、わかってくれるでしょう。


「でも…駄目だ」

本当にその人のことを愛しているならその人の幸せを一番に考えてやらないと。
女はひどく後悔した。自分の願望さうえに一番に大切なことを忘れてしまっていたからだ。女は何度も繰り返す。ごめんなさい…ごめんなさい…と今までしてきた罪の重さの分まで、何度も何度でも……―――。

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