SEXY-POLICE79
桐野は叫んで彼の元へ駆け寄る。やはり気づくのが少し遅かった。西塔の右半分の体は炎に焼かれ痛々しく、赤く腫れ上がっている。

「きり…の、無事……か?よかった…」

けふっと口から血が吹き出る。桐野は思わず叫んでいた。

「西塔!喋るな」

そのとき。
また別の部屋から爆発の音が鳴った。四つ先にあった隣の部屋からだった。震動がこっちまで伝わり地面が揺れる。それもかなりの爆発音だ。亀裂が入り支えが利かなくなった支柱が、ばこんと音を上げて砕け散り砂埃が舞う。桐野は目をつぶって咳き込んだ。息が苦しい。黒い煙が目を覆う。
天井めがけて上から下へ炎が酸素を求めてどんどん広がっていく。何か引火しやすいものにでも触れてしまったようだった。

「おまえは…悪くねぇよ桐野」

こんな事はいつか覚悟していたことだ。こんな事はいつか起こるような予感はしていた。警察としての職についたときから覚悟は出来ていた。

「西塔…。すまない…っ…すまない」

俺のせいだ!!俺のせいだ…!!と叫んでいる中で、どこか裏では俺のせいじゃない…!!俺のせいじゃない!と叫んでいる自分がいる。

火のまわりがどんどんひどくなっていき逃げ道が塞がれていく。西塔は火傷がひどくて歩くに歩けない。それでも桐野は西塔を助けようと、担いで歩こうとする。その時、腹のあたりで激しい激痛が襲った。じんわりと赤い色が包帯に染みこんでくる。

「桐野…傷が」

彼にはついさっき何者かに撃たれた傷がある。それがさっきの爆発で傷口が開いてしまったようだ。白い包帯から赤い血が染み出ている。

「こんなの大した傷じゃねぇよ。心配すんな」

そうは言っているが額からは汗が絶えない。息が苦しい、頭がふらふらしてきた。西塔は、俺を置いていけ!と桐野に言うが彼がそんなことをするはずもなく担がれていく西塔。ぼたぼたと床に痕をつける赤い血痕に、迫りくる地獄の炎の闔。

< 31 / 223 >

この作品をシェア

pagetop