SEXY-POLICE79
「桐野…」
「お前は…生きるんだよ、西塔」

生きてほしい、生き続けてほしい。
桐野は痛む体を我慢して炎から西塔を運ぶ。昔から桐野という男はそうだった。西塔はフッと鼻先で笑って桐野の身体から離れる。

「西塔?なにやってんだよっ早く!!」
「足でまといは…いらねぇんだよ。……桐野警部補」
「西塔…。まさか…」

チンッと開かれるエレベーターの扉。桐野は嫌な予感がして西塔に手を伸ばそうとすると、その手はゆっくりと切り放された。迫りくる地獄の炎に、残された道はあと少し距離のある唯一動くこのエレベーターだけ。担いで歩けば、たどり着けない距離ではない。

「桐野…おれは」
「…置いていかねぇ。…置きざりにして堪るかっ!お前はっ…、お前は生きるんだよ!!」

桐野は西塔の腕を引っ張って迫りくる炎の中エレベーターめがけて歩きだす。

助けるんだ!!助けるんだ!助けるんだ!!

がこんと閉まりだすエレベーターの扉に、出血と息苦しさに遠のき出す意識のなか桐野警部補は死にものぐるいで歩いて、エレベーターにたどり着くことができた。閉まっていくエレベーターの扉に、無事下めがけて下りていくエレベーターの音。



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