SEXY-POLICE79
時刻は夕方近い三時過ぎ国道は渋滞で車は中々前に進むことはない。焦りと苛立ちが冷静さを削いでついつい煙草に手が伸びる。

「すごい渋滞ですね」

進んだとしてもほんのわずか、ただでさえ急いでいるというのにこれでは桐野に追いつくことなんてできない。と、そこへ女性の悲鳴が聞こえた。

「ひったくりよー!!誰か捕まえてー!!」

鞄をかっさらったひったくり犯は逃げる逃げる、その場にいる人々はあまりの早さに唖然として、犯人を見送るだけ。女性は走って追いかけるが、犯人はもう遥か彼方だ。

犯人はちょうど須田の車の横を通り抜けると、彼の検察官としてのプライドが目覚めたのか、須田検事は渋滞中の車から降りてひったくり犯を追いかけていく。

「ちょっと須田さん!!」

柳沢が叫んだところで須田には聞こえていない。犯人は後ろから追ってくる気配に気づいて後ろを振り返ると、一見モデルみたいな男が自分を追っかけているではないか。犯人は追いつかれまいと速度をあげて、ある角を曲がった。しかしそこは自分を追い詰める巨大な壁となった。

「もう…逃げられないよ。…君」

久々にいい運動になったのか息が苦しい。犯人を追い詰めることに成功した須田に、犯人はクスクスと余裕の笑みをかましだす。

「何が…可笑しい」
「いえなに、少し良い事がありましてね。それがすごくおかしくって、つい」

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