SEXY-POLICE79
犯人はクスクスと笑って須田から手を放す。かけたはずの手錠もいつ外したのか、逃走するひったくり犯に須田は「待て!」と痛む体をひきつって犯人を追おうと試みるが、出血のせいか視界がゆらぎ意識が遠く真っ暗になってきた。

「あ、そうそう。仕留め損ねた刑事さんですが先程いかれましたよ。真っ白で美しい、闇の世界にね」

一瞬見えた犯人の素顔は、まだ若く女性に近い。笑みは消えることなく響き渡り、冷たさは消えることなく襲いかかる。

須田検事には信じられなかった、信じたくなかった。桐野警部補が死んだということを。

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