SEXY-POLICE79
“あまりに気持ちよく寝ているので起こしませんでした。わたしは仕事に行っています。食事は電子レンジでチンして食べてください。―――妃影より”
さらりとしたきれいな彼女の筆跡。テーブルには彼女が用意してくれた食事がある。
全くどこまでお世話になっているのか自分でもよくわからない。
須田は皿の上に乗った布を取る。

「!」

そこには見慣れた一枚のカードと手紙があった。


親愛なる須田検事
あなたを本当に愛する者に送ります。

心臓を抉られし
愚かなりマフィア像に
血ぬれの愚かなり神よ
――――ソードの2です






「まさか…!」

いやな予感がした。心臓がいやに鼓動を早く進めている。カードに染み付いた血痕が動揺を大きくしていた。
須田にはこのカードの意味がわかっていたからだ。ソードの2意味は『段階』。しかし、これはあくまで数字としての意味でしかなく「正位置」や「逆位置」の意味ではない。それに気になるのはこのカードに付着した血痕だ。桐野のものである可能性もあるし、もしかしたら彼女のもの、である可能性も間違いではない。『段階』とはまだ始まったばかりであることまだ死亡者が出ることを意味している。
どう?一本?
だめだ。彼女は関係ないのに、自分が関わったせいで自分のせいで…。
そんな時だ。トイレから水の流れる音が聞こえたのは。彼女なのか、いやもしかしたらまだ犯人がこの部屋に居たのかもしれない。須田は腰に手を伸ばした。けれど、しっくりとくる感触のあるモノがない。昨日の爆弾事故で海に飛び込んだときにうっかり落としてしまったようだ。とは言え、まだ予備の拳銃が腕に備えてある。法律的には検察官が銃を所持することは違法なのだが、彼だけは訳あって特別に許可が下りているのだ。ぎしぎしと近づいてくる足音に須田の体が強張る。
ピピピピピピ…。
小さな携帯音が鳴った。それも自分の着信音ではない、おそらく犯人からの電話である。ならこの足音はいったい誰のものなのか。携帯音に気がついた相手がこっちに近づいてきた。






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