ラブリー・トライアングル
私に避けられたのが相当不満なのか、ユキはイライラしたように手で顔を撫でて、それから、慰めを求めるように圭 の膝にすりよった。


「もう、ユキったら、いつまで圭とくっついてるのよ! 今度は私の番よ、どいてどいて!」


私は小柄なユキを抱き上げて、自分の座る場所を獲得しようとした。

ユキは迷惑そうに顔をしかめて、圭の腰に両手を回してしがみつき、なかなか離れようとしない。


「ちょっと、ユキ! 分かってるの? 圭は私のものなんだからね! 私のほうが先に圭を好きになったんだから!」


私が必死に言うのに、ユキは生意気にも『ふん』と鼻を鳴らし、平然と圭の隣に鎮座している。


「ユーキー」


ユキがまた私を引っ掻こうとする。

私は仕返しとばかりにユキを小突こうと手を伸ばした。


すると圭が、おかしそうにくすくす笑いながら、

「こらこら、二人とも。けんかしないの」

と私たち二人の頭を優しく撫でた。


その瞬間、私もユキも戦意を喪失する。

圭の手には特別な力があるようだ。


悪い感情をぜんぶ溶かしてしまうような、優しくて大きな力。




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