ラブリー・トライアングル
―――ピンポーン


チャイムが鳴った瞬間、私とユキは同時に足を踏み出した。

競い合うように玄関に向かう。


小柄なユキだけど、すばしっこいので、あなどれない。

私は全力で駆けた。


ほとんど同時に玄関に着く。


私は手を伸ばして玄関の鍵を開けた。


「圭! おかえり!」


ドアが開ききる前に、私は声をあげた。


「ただいま。ミカ、ユキ」


圭の優しい笑顔が、開いたドアの隙間からひょっこりと現れる。


今日は自分の名前が先に呼ばれたので、あまりの嬉しさに、私は圭に抱きついた。

すると、ユキも負けじと飛びついてくる。


くっ、しぶとい女だ。


「ちょっと、二人で抱きついてくると、さすがに動けないよ。靴を脱ぎたいから、少し離れて、ね」


圭が諭すように言ったので、私とユキはしぶしぶ離れた。


圭はおっとりとした動きで靴を脱ぎ、鞄を置く。

じれったい。

私とユキはじりじりしながらそれを見つめている。


「あ、なんかいい匂いがする。晩ごはん作ってくれたの?」


圭がにっこりと私に笑いかけてきた。

私もにっこりと笑い返す。


「うん! 今日はちょっと早く帰ってこれたから」

「そうかあ。嬉しいな」


圭が本当に嬉しそうに言って、私の頭をぽんっと撫でてくれた。

やった! がんばった甲斐があった。



< 3 / 15 >

この作品をシェア

pagetop